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タレント本って思わないで:陰日向に咲く

実は北森鴻さんの『メビウス・レター』を読んでいたんですが、これが超読みにくい・・・・ので、途中で放り出してしまって、次に読む本を探していたんです。
かねてから、『陰日向に咲く』は面白いって聞いてはいたんですけど、タレントさんが書く小説って評判にはなるけど、ほも間違いなく期待はずれなので、敬遠していました。
でも、他に読みたい本もなくて、どっちかっていうと消極的に買ったのがこの本でした。


でも。


期待してたのとは逆に方向で裏切られました。
すばらしい作品でした。
本当にこれ、処女作なの?
「著者:劇団ひとり」って書いてるのが逆にネガティヴに受け取られてしまうのならもったいなさすぎって思いました。

「道草」「拝啓、僕のアイドル様」「ピンボケな私」「Over run」「鳴き砂を歩く犬」の全5篇が収められています。
短編集かなって思ったら、実はすべて書き下ろしの連続短編集。
それぞれのお話が相互に繋がっているのだけど、それが横だけのつながりじゃなくて、縦のつながり・・・つまり現在と過去ともつながってるんですよね。ちょっと叙述トリックも取り込んでて、最後の最後、最後の1ページに書かれた、最後のたった1行ですべてが結実します。
感動します。

文章は確かに稚拙かもしれないけど、着目点も冴えてるし、構成も巧みです。ベースは自分のお笑いのネタと同じなのかもしれないけどね。
「400字詰め原稿用紙で307枚」って最後に書いてあるけど、むずかしい言い回しや凝ったギミックもないからサクサク読めます。あたしは読むの早いほうなので全体で3時間くらいで読み終えちゃいましたけど、ゆっくり読んでも1日で読めちゃうんじゃないかな。


俳優としても歌手としてもマルチな才能を発揮してる劇団ひとりだけど、このひとの奥の深さを知って、何て末恐ろしいひとなんだって思いました。実は小説家の才能が一番ではないでしょうか。芸人としてはたいしたことないと思うから、ぜひこちらに専念してみては?って思わせるほどの一冊でした。


評価は★★★★★。ちょっと甘いかなって思うけど、これが処女作なんだし、大きな将来性に期待を込めて。