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幸福とはいえない幸せ:星々の舟

星々の舟
星々の舟
posted with amazlet on 06.10.27
村山 由佳
文芸春秋

天使の卵』に続いて村山由佳さんの本を読みました。今回は直木賞受賞作。連作短編ということで正直あんまり期待はしてなかった。というのも連作短編っていうと、同じ説明が何度も繰り返されたり、後半に無理やり締めようとして矛盾が出てきたりとか、作者の技量が問われるものだから。連作短編で人気の北森鴻さんの作品だってつらい作品もあるくらいだし。
天使の卵』がすっごくいい感じだったので、この『星々の舟』も恋愛小説なのかなって思いながら読み始めました。ところがそのイメージは見事に打ち砕かれました。もちろんいい意味で。


最初のお話の主人公は水島暁。義母が亡くなって暁が数十年ぶりに帰郷するところから物語は始まります。最初の暁の話に登場する末の妹の美希が次の主人公となって、次のお話はその姉の沙恵、長男の貢、貢の娘の聡美、そして最後は父親の重之と、バトンリレーのように話がつながっていきます。主人公が交代していってそれぞれの視点から物語が描かれていくのだけど、お話自体はずっと1つの流れ。たまたま連作短編の形をとってはいるけど、これは紛れもなく水島家を描ききった長編小説だといっていいと思います。これって角田光代さんの『空中庭園』と同じような、けっこうポピュラーな形式らしいですね。


この水島家。家族それぞれがいろんな問題を抱えている。近親相姦(というか実際は、血のつながりがないと思っていた兄妹が愛し合ったら、実は同じ父親だったことが後からわかる)、不倫、家庭に居場所がない父親、いじめ、戦争の傷跡・・・。まさに問題てんこもり。
普通ならとても重い文章になったり、消化不良になったりするんだけど、この作品に限っては文章が読みやすいことと、無理に結論めいたことを出さないで流しておくことで、うまくバランスを取っているように感じました。


この本で言いたかったことはたぶん、最後に重之の言ったこの一文に集約されてると思います。
「幸福とは呼べぬ幸せも、あるのかもしれない」


幸福と幸せ。言葉の遊びかもしれないけど確かに違うものかもしれない。幸福とは思わないまでも、不幸でもないし取り立てて大きな不安も不満もないこと、それが幸せなのだとしたら、そういうのもきっとあるんだと思う。あたしにはそういう幸せすらもないのだけど(苦笑)。



正直、村山由佳さんは等身大の女性の恋話しか書かないようなありふれた女流作家さんのひとりとしか、これまで思ってなくってずっと避けてきていました。その印象は『天使の卵』でも大きく変わることはありませんでした。でもこの『星々の舟』を読んで、その認識は大きく間違っていたということに気付きました。
また大切な作家さんがひとり、あたしのリストに加わったのです。


★★★★★で文句なしです。