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藤原流ハードボイルドの原点:ダックスフントのワープ

ダックスフントのワープ
藤原 伊織
文藝春秋
売り上げランキング: 95090
おすすめ度の平均: 3.5
3 ゆるーい感じ
4 心地よい諦観

藤原伊織さんのデビュー作品『ダックスフントのワープ』をようやく買いました。藤原伊織さんっていうと、『テロリストのパラソル』で史上初めて直木賞江戸川乱歩賞をダブルで受賞したというすばらしい作家さんで、つい最近、自身が食道癌であることを告白したことでも知られています。そんな藤原さんの作品なのですが、題名が軟弱っぽかったので今まで読んでこなかったのだけなのです。でも・・・いざ読んできたら、これはとても藤原流ハードボイルドな短編集だったのです。


表題「ダックスフントのワープ」というお話は、大学の心理学科に通う「僕」は、自閉的な少女・下路マリの家庭教師を引き受け、彼女の心の病を治すため、異空間にワープしたダックスフントの物語を話し始めるのです。そのダックスフントは90歳の老犬。異空間とは悪意の棲む砂漠の真ん中。ダックスフントは老体に鞭打って襲い掛かる妖鳥に戦いを挑むのですけど、このダックスフントの生き方がすごくかっこいいのです。これがハードボイルド。もしかしたら伊織さんの登場人物の中で一番かっこいいかもって思ってしまうほどです。途中から登場する女性担任教師の生き方も刹那的。結局、みんな他人とうまく距離が取れなくて、うまく生きてゆけない自分をあきらめてる感じ。しかもそれを是として受け入れてる。あたしもこう生きたい。


これも含めて短編が全部で4作品。
「ねずみ焼きの贈り物」はちょっとダークサイドだったけど、「ユーレイ」もとても切なくていいお話でした。あたしはこういうの大スキ。あと最後の「ノエル」っていうお話は、小さい頃の思い出の品・・・きっと家族だったり親とかを象徴してると思うのだけど・・・を壊すことで男の子が少年に変わる姿を描いています。


評価は★★★★☆。
気が向いたら、ぜひ読んでみてください。