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二転三転の法廷ミステリー:目撃

目撃
目撃
posted with amazlet on 06.11.18
深谷 忠記
角川書店
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おすすめ度の平均: 4.0
4 「心理サスペンス」と「法廷サスペンス」の融合

あたしは法廷ミステリーってかなり好きなジャンル。映画とかでも裁判モノはついつい見入っちゃいます。ア・フュー・グッドメンとかね。
で、この『目撃』は、重厚な法廷ミステリーの大作なのでした。文庫本で550ページに迫る長編なのだけど、グイグイ引きこまれてしまって、とてもそんなに長い作品とは思えないくらいのスピードで読んでしまいました。


このお話は「いかに人間の記憶というものがいいかげんなものか」という視点から描かれていて、行ってもいない場所で目撃されてしまったために自分の夫を毒殺したという罪で裁判にかけられた関山夏美を巡る裁判と、とあることがきっかけでその裁判の調査に助力することになった曽我の身に39年前に起きた殺人事件の巡る2つの「目撃内容」について、記憶の持つあいまいさ、事後形成される記憶という観点から、その真相に迫ろうとします。


裁判のほうは目撃情報を必死に覆しながら、後半の第6回公判で弁護士の服部朋子が証人に迫るシーンは、かなり長いやり取りなのだけど、朋子が証人をたくみに追い込んでいく様は、迫力とリアリティがあって、読む手を止めることができませんでした。
一方、曽我の方の39年前の事件。曽我の目撃証言が決め手となって母親が逮捕され、拘置所の中で自殺をしてしまうというのが39年前に起きたのだけど、曽我は関山事件の調査を進める中で、自分の目撃した内容に疑問を抱くようになり、母の冤罪を晴らすよう事件の真相を解明しようとします。実はこっちの方は途中からわかってしまうので案外な結果なんだけど、その「目撃内容」がどうやって形成されたかという説明にとても説得力がありました。


あたしもこんな経験があります。
中学校2年のとき、ともだち2人にからかわれて、言ってもいないことを二人から「あんた、○○って言ったよ」って言われ続けたら、その「記憶」がよみがえってきて1時間後、「あ、そんなこと言ったね」って認めてしまったのです。


見てもいないことを見たと記憶したり、会ってもいない人と会ったことがあると思い込んで疑わなかったり、人間の記憶がどう形成されるかと科学的に説明し、それを2つのストーリーにうまく絡めて、その謎解きが交互に繰り広げられて、読む側に退屈な隙を与えないで説得力あるストーリーを展開するこの作者の力量はすばらしいと思います。


というわけで、評価は久しぶりの★★★★★満点評価。
この本を読むと、人生観が少し変わるかもしれません。