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ベルトコンベア式人命救助:幽霊人命救助隊

幽霊人命救助隊
幽霊人命救助隊
posted with amazlet on 07.05.01
高野 和明
文藝春秋 (2007/04)
売り上げランキング: 3183
おすすめ度の平均: 5.0
5 軽いノリで...


13階段』『グレイヴディッガー』の高野和明さんの最新作が文庫になったので早速読んでみました。


これまでのシリアス路線やホラーチックな作品を手がけてきた高野さんが初めて見せるコメディー性の強いエンターテイメント。でもその中身は高いメッセージ性を持った感動作でもありました。


ストーリーは、自殺を遂げて天国にいけない4人の霊が、神にこう命ぜられるのです。「自殺者の命を救え」と。ノルマは100人、期限は7週間、すなわち四十九日。これを果たした暁には天国に行けることを約束された4つの霊は人命救助隊を結成し、地上に舞い降りたのでした。


主人公は東大受験を2度失敗し、首吊り自殺をした高岡裕一。彼が天国に向かう断崖絶壁を登りきり、ようやく頂上に到着したとき、別の3人がそこにいたのです。拳銃自殺した元やくざの八木、服毒自殺した元企業経営者の市川、そして飛び降り自殺をした若い女性の美晴たちと組んで、人命救助隊として100人のノルマを果たすべく、下界の東京を懸命に走り回ることになるのです。
自殺を考える理由は十人十色。失恋、いじめ、リストラ、多重債務、過失による事故・・・。人の抱える心の影の部分を見抜き、的確なアドバイスをしてあげたり(当事者からすれば、インスパイヤされるのでしょうか)、心をほぐすような働きかけをしたりして、1度の失敗もなく順調に人命を救助していくのです。
そしてついに100人目の救助対象者はとても意外な人物でした。その100人目の対象者の命を救ったとき、4人は自ら命を絶ったことを本当に悔やみ、そして救われて天国に向かうことができたのでした。


導入部分のユーモアさと、自分を責めて悲観的な想いだけが固まっていく抑鬱状態の描写は、なかなかなものでした。しかし、読み進めていくにしたがって、「自殺すべてが鬱が原因によるもの」と片付けてしまっている点が気になるようになりました。
確かに自殺を考える状態っていうのは鬱状態ではあるのだけど、医者に行って治療しさえすれば自殺せずに済むかっていうと、それだけじゃ決定的に不足。たとえば職場や家庭の理解、社会保障や法律面の整備といった、その人を取り巻く環境面の改善やサポートが不可欠。そのどちらもが両輪になって初めて鬱状態から解放されるのです。
救助していく時に、「病院へ行け」と説得するだけで、自殺の危機を脱してしまうという、すごく単純な解決策が目立っていたのはすごく残念。なんか機械的に病院送りにすればいいっていうのはとても乱暴すぎます。精神科医が書いた参考文献を一生懸命読んではいるけど、鬱状態になっている実際の人物と接触したことはないのかなぁなんて思わされる場面が目立ちました。
後半になると多重債務者の法律的な救済策を示したり、銀行を中心とした日本の経済システムのデタラメさを批判したりするなど、鋭い風刺が見られてくるようになるのですが、結局ここでも「弁護士に行け」っていう乱暴な片付け方がどうしても気になって仕方がありませんでした。


着眼点はすばらしく、エンターテイメント性の高い作品に仕上がっているのですが、ベルトコンベア式に救助していくっていうような印象が否めず、すっごく残念。
というわけで、評価は★★★☆☆までとしておきます。