野沢 尚
講談社 (2007/05/15)
売り上げランキング: 19681おすすめ度の平均:亡き人の息づかい
野沢尚さんの最後の作品『ひたひたと』が文庫化されましたので、早速読みました。
本当はきっと5作の連作短編集になるはずだったと思うのですが、急逝のためにわずか2本だけが収録されています。
インターネットのサイトを見た5人の男女が5角形の部屋に集い、それぞれの秘密を語るという形で物語りはスタートし、「十三番目の傷」と「ひたひたと」という2つのお話が綴られています。どちらもホラーチックなミステリー。もちろんそれぞれ完成度の高いお話なのですが、
自殺をした野沢先生の苦悩が滲みあふれてくるようで、ちょっと複雑な気分に・・・。結局、連作が完結していないことで、そういう印象だけが残ってしまうのかもしれません。
あと、この文庫化にあたって、長編小説「群生」のプロットが収められているのですが、プロットだなんていうにはふさわしくなく、もはやほとんど小説になっています。想像以上の完成度で、いい意味で予想を裏切られました。
さて評価なのですが、結局は未完成作品であり、★★★☆☆が精一杯。でもファンにはぜひ読んでほしい一冊です。