おすすめ度の平均:藤原作品の持つカタルシス
男性って不器用なのかも
やはり長編の方が・・・
先日、食道がんでお亡くなりになった藤原伊織さんの短編集です。
全部で3編が収録されていて、いずれも主人公は絵画や広告などクリエイティヴな仕事をする「一般の人」。そんな彼らのちょっとストイックな生き方がテーマになっています。いわば「普段着のハードボイルド」ていう感じの作品です。
彼らは現在の自分と過去の自分を対比させながら、それでも過去に目を背けて必死にもがいているけど、表面はクールを装うような、素直に自分の感情を表すことを是としない。不器用な男たちの葛藤や悔いなど、微妙な心のひだを藤原さんの独特のテイストで見事に謳いあげています。
何かを求めるより、余計なものを削いで生きるしかできない、そんな男たちへの挽歌なのかもしれません。
短編なのであっさりとしたテイストにはなっていますので、直木賞と江戸川乱歩賞をダブル受賞した名作『テロリストのパラソル』のような派手さはありませんが、まさに藤原伊織ワールドです。
評価は★★★★☆。