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もう続編はいらない:楽園

楽園 上 (1)
楽園 上 (1)
posted with amazlet on 07.08.21
宮部 みゆき
文藝春秋 (2007/08)
売り上げランキング: 25
おすすめ度の平均: 4.0
1 全て消化不良
5 徐々にエネルギーが充満してくる上巻
3 コンスタントな実力はあるが



楽園 下
楽園 下
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宮部 みゆき
文藝春秋 (2007/08)
売り上げランキング: 21
おすすめ度の平均: 3.5
3 終章はいいが・・・
3 模倣犯とは切り離して読もう
5 宮部みゆきが下した結論

『模倣犯』の主人公でフリーライターの前畑滋子が再登場し、新しい謎に挑む長編ミステリー。あの忌まわしい事件から9年後。滋子はひどく傷つき、9年経った今もまだ立ち直れないままでいた。そんな滋子に奇妙な依頼が舞い込んできた。荻谷敏子という女性から持ち込まれた絵、それは公訴時効を過ぎた16年前の少女殺害事件の現場を描いたものだった。その絵を描いた敏子の子、萩谷等(ひとし)はもうこの世にいない。敏子は自分の子供のサイコメトリー能力の真偽を確認してほしいという依頼であった。
滋子は等がサイコメトリーをして書き残した絵にひどく驚くのです。その絵の中に9年前の山荘の絵があったからです。滋子は先入観を持たないように努力しながらも、徐々に等の能力を確かめるように調査を開始するのです。
滋子が調査を進めるが、そう簡単に真相には近づけない。滋子の前に立ちはだかるのは16年という時の流れであり、自分の娘を殺害した土井崎家を守ろうとする関係者であり、「超能力」という説明できないものであったり・・・。
しかし薄皮をはがすかのように滋子は真相に近づいていくのですが、調査は意外な展開を見せます。事件そのものやその周辺にはまた別の犯罪が絡み、滋子はまた凶悪事件に対峙することを余儀なくされるのです。


9年前の事件で大きなダメージを受けた滋子の再生小説でもあり、凶悪犯罪にまつわる長編ミステリーでもあり、超能力の話題もあり、犯罪に手を染めなくてはならなくなった家族の悲哀を描く物語でもあり、さまざまな要素が絡む複雑なお話なのです。『模倣犯』『火車』『理由』『クロスファイヤ』『龍は眠る』などなどで宮部みゆきさんがあたしたちを唸らせたすべての要素がすべて収められていると思います。すなわちファンタジーと時代小説以外の宮部みゆきすべての魅力が詰まった作品だと思うのです。
これほど盛りだくさんの内容をキチンと読ませることができる筆力はさすが宮部みゆきさんだと唸らされますし、子供の描写は宮部みゆきさんならではものがあります。


ただ、果たして前畑滋子を再登場させなければならないのでしょうか。『模倣犯』の続編って言っても、『模倣犯』と直接つながる箇所はほとんどない―――――滋子が等のサイコメトリー能力を信じるきっかけになった山荘の絵だけ――――のに、中途半端に『模倣犯』のエピソードや網川浩一の名前を出しているために、『模倣犯』を読んでない読者には何のことやらさっぱりわからない文章が出てきます。肝心の山荘の絵についても、どうして等がそれをサイコメトリーできたのかっていう点については結局最後まで明かされずじまいだったわけで、続編である必要はまったくといっていいほど感じません。乱暴に言ってしまうなら宮部みゆきさんのアイデアが枯渇しているとしか思えないのです。それともベストセラー『模倣犯』の続編っぽくすれば売れるから? そんな風に疑ってしまう。
もう宮部さんの「続編」はたくさん。本当の意味での新作を読みたい。過去の作品を焼直したようなだけの手抜きは読みたくない。あたしが読書にハマるきっかけを作ってくれた大好きな作家さんの斜陽を感じるのは本当につらい。


評価は★★★★☆。星3つにしようかどうか散々悩んだけど、作品自体は本当によくできてるから4つに。『模倣犯』の続編としている部分と、山荘の絵の謎が未消化な分だけ減点とさせていただきました。