名残り火 (てのひらの闇 (2))posted with amazlet on 07.10.15藤原 伊織
文芸春秋 (2007/09)
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藤原伊織さんの正真正銘の遺作。別冊文芸春秋での連載が終わり、途中まで加筆修正を加えていたところで藤原さんがお亡くなりになってしまい、その状態で刊行された長編ミステリー作品です。
『てのひらの闇』から数年後のお話。堀江はサラリーマンを辞して個人でマーケティングリサーチの事務所を構えていたのですが、前職時代の同僚の柿島が、オヤジ狩りと思われる数名に襲われ、そのまま息を引き取ってしまうのです。
しかし堀江にはどうしても引っかかるものがあった。そこで彼は柿島の死の背後にあった闇の部分に迫ろうとします。その闇とはコンビニ業界のフランチャイズ契約の問題。流通組織を改革しようとした柿島は退職を余儀なくされたのですが、そこには不可解な謎が残されていたのです。登場人物たちが意外な形で接点を持ち、用意周到に計画された殺人だったのですが、その幕切れはあまりに悲しいものになってしまうのです。
コンビニ業界のフランチャイズ契約の問題点をうまく描きながら、堀江、三上などの個性ある人物の間に漂うハードボイルドな雰囲気を楽しめる佳作に仕上がっています。
前作『てのひらの闇』を読まなくても十分に楽しめる作品です。藤原ファンは必読です。
評価は★★★★☆。