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あのころの想い:対岸の彼女

対岸の彼女 (文春文庫 か 32-5)
角田 光代
文藝春秋 (2007/10)
売り上げランキング: 391
おすすめ度の平均: 4.0
4 なぜ私たちは年齢を重ねるのか。また出会うためだ。出会うことを選ぶためだ


第132回直木賞受賞作品。
角田さんの作品は『空中庭園』を読んで以来で、『空中庭園』はあんまり面白くなかった。今回は直木賞作品だっていうことでかなり期待して読み始めたんですが、グイグイ引き込まれて熱中して読んでしまいました。


表面上は女同士の友情を描いているのですが、3人の内面が巧みに描かれてとても読みごたえがある。主人公は小夜子、葵、ナナコの3人。現在の様子が小夜子の視点で、そして過去の出来事を葵の視点で描かれ、両者が交互に展開されます。
「現在」の葵と、「過去」の葵の性格が全然違うのですが、その乖離の原因が読み進めるうちにだんだん埋まっていきます。その理由を知りたくてページをめくる手が止まりません。


平凡な主婦としての選択をした小夜子は公園デビューに失敗し、内にこもりがちな性格になっていく。そんな自分を打破するためか、外に仕事を求めるようになります。そこで出会ったのが旅行業を営む葵でした。二人は意気投合していくのですが、奔放な葵に対して小夜子は一種のバリヤーを張るようになってしまう。そして二人はやがて離れ離れに。
一方、過去の葵はいじめられっこで、高校入学を機にいじめから逃れるように家族揃って群馬の地方都市へ引越しをします。そこでナナコと出会います。周りの目を気にして、いじめられる順番がめぐってこないかどうかビクビクしながら、ナナコとは適度な距離を置いて付き合う葵。そんな葵とナナコは夏休みのペンションのバイトをきっかけに、衝動的にある行動に出てしまいます。そして最後には悲劇的な別れが待っているのです。


葵とナナコが最後に対面するシーンは何度読んでも切なくって涙が出てきそうになる。あたしの高校時代なんてひたすらガリ勉のつまんない3年間だったけど、多感な時期に他人の痛みや自分の心の苦しみを経験できた人は、きっといい人間になれるに違いない気がします。あたしはとてももったいないことをしたなって後悔。
友情を育むのって本当に難しい。特にあたしの場合は。だから葵やナナコや小夜子の苦しみがよく理解できる。


まさに直木賞にふさわしい秀作だと思います。評価は文句なく★★★★★