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いわゆる新説三億円事件モノ:閃光

閃光
閃光
posted with amazlet on 06.10.01
永瀬 隼介
角川書店 (2006/05/25)

昭和43年の三億円事件を踏襲したフィクションのミステリーです。
実際のこの事件は単独犯として捜査されて迷宮入り、時効を迎えてしまいましたが、この作品では一旦犯人に迫りながらも捜査方針から追い詰めることができなかった定年間際の老刑事・滝口が、中年男性の他殺死体が発見されたのをきっかけに、もう一度事件の真相に迫ろうというお話に仕上げられています。
巻末の解説によると、この本で実行犯とされている不良グループのリーダーのその後の運命と家庭環境もほとんど現実をトレースしていて、実際の捜査でも、この自殺した少年の犯行を疑う声も根強くあったとのことです。

三億円事件をフューチャーしたミステリー作品は数多くあるらしいのですけど、単にこの題材に寄りかかっただけだったり、この本当の事件の大きさを前にこれを消化しきれないまま終わってしまってる作品が多いと思うんだけど、この作品に限っては、三億円事件のスケールの大きさに負けることなくちゃんと消化して、且つ人間のドラマと犯人グループの面々が次々と殺されてしまうという連続殺人のミステリーという、まったく独自の佳作に昇華させています。
正直言うと、警察が組織防衛のためにここまでやるのかという気がしないでもないですけど、そういうこともさもありなん・・・というエンタメ的な脚色だっていうことで一応理解できなくもありません。


弱点らしい弱点もなく、ミステリーとしても人間ドラマとしても厚みがあって、読み応えのある、とてもすばらしい作品だと思います。
ただ、読み終えたあとのスッキリ感ももう一息だった気もするので、もっともっと突き抜けちゃってもよかったかなぁって思ったりもします。たとえばもっと警察を悪者にしちゃうとか、滝口に巻き込まれてしまう所轄の片桐刑事をもっとヘタレにするとか、もっとハードボイルドに振るとか。


というわけで評価は★★★★☆。