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私鉄沿線の風景:送り火

送り火
送り火
posted with amazlet on 07.02.04
重松 清
文藝春秋
売り上げランキング: 1332
おすすめ度の平均: 4.0
4 家族の話
4 あざといな、と思いつつ、著者の術中にはまる・・・


「アーバンホラー」っていう、ちょっと怖い表現をされているらしいんです、この本。帯には「街と暮らしが織り成す、幸せについての9つの物語」と書かれています。
物語の舞台はは、きっと京王線をモデルにしたと思われる、武蔵電鉄富士見線。富士見線の駅とそこにある街で暮らす人々が主人公になってる、9つの短編が収められています。どれもありふれた日常の風景の中での非現実的なお話。
ホラーというより、決しておどろおどろしい感じでもなくって、いろんな人々が自分たちの家族や暮らしへの想いを綴ったファンタジーという感じで、ホラーが苦手なあたしでも全然問題なく読めました。
生きてゆくこと-----時々辛くなることもあるし、とても執着することもあります。人々は悩んだり、悲しんだり喜んだり・・・。その気持ちが強く、深く、やさしく、純粋で、真剣だから、どのお話もとても切なくて、人々の愛が伝わってきました。
表題作の「送り火」もよかったけど、あたしが心を揺り動かされたのは「家路」「もういくつ寝ると」「かげぜん」の3作品。重松さんの術中にまんまとはまってしまいました。卑怯だよね〜(笑)。


線路や駅に沿って鉄道会社の系列のデベロッパーによって街が開発され、夢と希望を抱いた家族がそこに集い、街を作り上げていきます。住民はみな前を見つめて必死に生きてて余裕が感じられない気がします。
「家路」「送り火」に出てくるお父さんを読んでると、みんな私鉄沿線に人生を縛られて翻弄されてるような気がして切ないし、ちょっと気の毒で、言葉は悪いけどちょっと滑稽。


あたしもかつて、西武新宿線とか東急田園都市線の沿線住民だったけど、私鉄沿線の住民っていうのは、JR沿線の住民と明らかに違うと思います。通勤電車に乗ってると、乗客はみな余裕がなくってピリピリしてる。その熱がどことなく息苦しく感じちゃうし、ちょっと怖い。だからあたしはもう私鉄沿線はあんまし住みたくはない。
田園都市線に住んでたころは、沿線から逃げたくて逃げたくてしかたがなくって、晴れて今は田舎のJR線に居を構えてるのだけど、思い出してみると、あの電車に乗ってたみんな、ここの本に出てくるような想いを抱いてたのかなぁって思うと、あの通勤電車の独特な雰囲気も納得させられました。


評価は★★★★☆。