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おなじみの重松ワールド:[]ビタミンF[]

ビタミンF
ビタミンF
posted with amazlet on 07.02.16
重松 清
新潮社
売り上げランキング: 6372
おすすめ度の平均: 4.0
5 セッちゃん・ゲンコツ
5 身につまされる
5 かっこつけることのない人間観


ビタミンっていうと、ビタミンCとかAととかB1とかB12とかは有名ですけど、「ビタミンF」っていうのは今は欠番になっています。つまり昔はビタミンFって呼ばれるものは存在していたそうなんだけど、その後物質の詳細がわかってビタミンじゃないってことになったんだそうです。


で、この重松清さんの『ビタミンF』は、そのビタミンFじゃなく、Family、Father、Friend、Fightなどの頭文字の「F」から名付けられた、心に効くビタミンのような短編小説集でした。
この『ビタミンF』、第124回(2000年)の直木賞を受賞しています。最近は直木賞って言っても変な作品もあるから、鵜呑みにはしないのだけど、重松さんはあたしの中では中年夫婦の家族の話をうまくまとめる作家さんとして確固たる地位を築き上げようとしているので、ホームランもないけど三振もない、手堅いアベレージヒッターとして手を出せます。


この本も案の定、父親からの視点から描かれている、おなじみの重松ワールド。収められている物語は以下の7作品。


・ゲンコツ
・はずれくじ
・パンドラ
・セッちゃん
・なぎさホテルにて
・かさぶたまぶた
・母帰る


どこにでもいるような家族の、どこにでもあるようなお話だけど、どれも決して明るい話じゃない。どっちかというと切なくてほろ苦くて、物悲しいお話がほとんど。
こういう本を読んじゃうと、自分が家庭を持って子供を育ててっていうのが怖くなる。あたしは深く考えすぎなんだろうけど、あんまり深く考えずに結婚して責任感なく子供を作って・・・っていう若い人を見ちゃうとなおさらあたしにはムリだって思うし、もう既に結婚もする気もないあたしにとっては、どうしても壁っていうか距離を感じてしまうんです。で、こういうお話を読んでても、どうしても入り込めないって言うか、斜めに見ちゃうところがあるんです。
一番読んでてつらかった+感情移入できたのは「セッちゃん」だった。あたしも小学生や中学生の頃、無視されてつらかったことがあるし、逆にそうしたこともあったので・・・。子供には子供の世界があって子供自身で乗り越えていかなくちゃなんない、けど親はちゃんと気づいてあげなきゃいけないのだ。
昔の親は、自分の家の後継ぎとして、あるいは老後の面倒を見てもらうために子供をもうけ、今の親は愛玩動物と同じレベルで子供をもうける。どっちも子供の視点が、ない。そんな親の顔色をうかがって自分を追い詰めてしまう子供が可哀相に思えてならなかった。
でも「なぎさホテルにて」とか「パンドラ」のようなお話はキライ。男親からの視点だけからかかれてる身勝手な言い回しがとても気になりました。そんなわけで読後感はイマイチ。


作品自体はとてもよくできてると思いますし、直木賞の名に恥じない秀作だと思いますけど、結局、あたしは「ビタミンF」というこのタイトルほど、この本から元気はもらえなかった。
というわけで、評価は★★★☆☆。