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いじめはきっとなくならないよね:ダーティー・ユー

ダーティー・ユー
ダーティー・ユー
posted with amazlet on 07.02.17
高嶋 哲夫
光文社
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今度映画化される『ミッドナイトイーグル』の作者、高嶋哲夫さんの本です。
アメリカで生まれ育ったユーこと14歳の小野田雄一郎が、日本の中学校に転校してきました。雄一郎はアメリカと日本の学校の違いに愕然とし、教師や生徒と衝突します。そんな中、いじめにあっている伸一と仲良くなるんですが、その伸一がいじめを苦に自殺をしてしまいます。いじめの存在から目をそらして臭いものにふたをしようとする学校側と戦う決心をした雄一郎は、真実を求めて伸一の両親と協力して裁判に訴えようとするお話です。


あたしはテレビや本でありがちな「外国から見た日本の変なところ」を強調するようなことは大嫌いです。この本もてっきりそういう本だと思っていましたし、本の冒頭はそういう書き方が目立っていました。雄一郎が日本の学校になじめず、ことあるごとにアメリカと比較して日本の学校のダメなところをあげつらっていたから。
でも伸一が自殺してから雄一郎のスタンスがはっきりしてきてから、ストーリーにぐいぐいと引き込まれていきました。とても中学二年生とは思えない雄一郎の知識や表現は気になったんですけど、悪いものは悪い、悪いことをしたら罰せられるべきだと言う雄一郎の明確な考えが痛快で説得力があるんです。それに対峙する日本社会の「秩序」、学校の閉鎖性、少年法、いじめ問題、日本の教育システム、親のしつけ・・・。日本の少年を取り囲んでいる様々な矛盾や問題点が、日本を知らない雄一郎の視点から見てみると、明確に浮き上がってきます。
「いじめは犯罪なんだ!」と悲痛に叫び続ける雄一郎と、それを冷ややかに受け流そうとする周りの人間とのギャップがとても印象的です。


作者の高嶋さんは元々原子力研究者で、原発を爆破しようとするお話も書いていますが*1、アメリカで教鞭をとっていた経験もあって、決してマスコミの論調のうわべだけをなぞった内容ではなく、自分自身の経験や原色の教育者への取材を通してこの本を書いていますので、フィクションのお話とは思えないくらいリアリティーがあります。
雄一郎の父親が長々と説明する、学校教育に自由競争原理を導入して塾も正規の教育機関として認めるべきだと言う主張は、高嶋さん自身の主張のほかなりません*2
昔と比べて教師のレベルが下がっているとは思いません。でも体罰禁止とか様々な手かせ足かせで教師をがんじがらめにし、挙句に本当は家庭の役目であるはずのしつけまで学校側に依存し、自分の子供を甘やかすことしかしてこない親が大きな問題だと思っています。


あたしも小中学校のころはいじめもしたし、いじめられもしました。いじめの連鎖の中にいやおうなしに組み込まれて、その中で嵐が去っていくのを待つしかありません。いじめを苦に死にたいと思ったこともあったけど、きっと今ほどひどいいじめはなかったのかもしれない。でもきっとこれからもいじめはなくならない。だとしたら逃げ道を見失って死を選ぶしかない子を出さないような、システムを考えなくちゃいけないような気がしています。いじめ110番なんて何の役にもたちはしないんだから!


というわけで、評価は久しぶりの★★★★★です!
今の生徒や親はもちろん、現役の教師、文部科学省の役人にも絶対読んでほしい珠玉の一冊です。

*1:スピカ―原発占拠

*2:詳しくは『塾を学校に―「教育改革」への一石』に書かれています