おすすめ度の平均:いい!
こわい。
これから質問をはじめます
久しぶりに恩田陸さんの本を読んでみました。というのもこの本、タイトルとおり、Q&A形式だけで進行するっていう構成にとっても興味を持ったからです。
東京郊外の大型商業施設・Mデパートにおいて重大死傷事故が発生しました。死者69名、負傷者116名。火事? 毒ガス? 傷害事件? 事件被害者の目撃証言がことごとく食い違っていて、事故原因はいつまでたっても特定できないまま、いたずらに時間だけが経過し、事件は風化していくのです。
この本は事件被害者のインタビューや、関係者の会話など、すべて質問&回答だけでストーリーがつづられていきながら、その会話の進行とともに事件の陰に隠された悪意が徐々にあぶりだされていくことになるのですが、読んでいる読者に、背筋の寒い思いをすることになるのです。
最初は、宮部みゆきさんの『理由』と同じような内容なのかなぁって思いながら読んでいたのですが、読み進めていくにしたがって、恩田陸さんがQ&Aの背後に据えていたとてつもなく冷たい狂気の世界に、だんだん恐怖と嫌悪感を持つようになってしまいました。恩田さんの世界観を押し付けるのはかまわないけど、なんか読者とのキャッチボールっていうか、理解してもらおうっていうか、そういった「思いやり」がない作品だなぁって思うようになってきました。
恩田陸さんの作品で以前読んだ『ねじの回転―FEBRUARY MOMENT』もそうだったけど、恩田さんの中でつじつまがあってれば、読者には理解されなくてもいいっていうか、そういう突き放したような冷たさを文章から感じるんです。この『Q&A』でも最後まで真相は明確に示されず、読者に残るのは読後感の悪さと消化不良の謎だけ。
あたしはきっと恩田さんの世界観っていうか、感覚っていうか、そういうものに共感できない人なんでしょうね。
評価は★★★☆☆。ちょっと甘目かもしれないけど、文章自体はよく書けてると思うし、リーダビリティーもかなりのものだと思うので、こういう後味の悪さが好きな人、恩田陸さんの世界観に慣れてるにはオススメだと思いますから。