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負けることが許される人生であってほしい:熱球

熱球
熱球
posted with amazlet on 07.07.10
重松 清
徳間書店 (2004/12)
売り上げランキング: 74128
おすすめ度の平均: 4.5
4 穏やかな感動。
5 中年社会人向け青春小説!
4 長編もいい重松清


熱狂的に好きな人もいるので、あんまり大きい声じゃ言えないんですけど、あたしは高校野球が嫌い。っていうか、アマチュアスポーツ全般が嫌いなんですけど、その中でもアマチュア野球とアマチュアサッカーが特に嫌い。アマチュアリズムを押し付けるような風潮と、マスコミが異常に盛り上がるのが嫌い。ちなみにあたしは学生時代は卓球とか写真とかのインドア。あとハンドボールをちょっぴり。

で、この本は「高校野球」がテーマの本。だったら読むなよって思うんだけど、それは高校野球自体のお話ではなかったから。


物語は周防市という、おそらく山口県になる架空の小さな地方都市。20年前、弱小だった周防高校の野球部がツキにツキまくってあれよあれよという間に夏の地区予選の決勝戦へ進出してしまうのです。しかし決勝戦直前、野球部は不祥事で出場を辞退せざるをえなくなり、戦わずして夢をあきらめなくてはならなくなるのです。しかも周りの住民からは「恥さらし」呼ばわりまでされる始末。
主人公のヨージはそのときのエースで、東京の出版社に就職後、家庭を設けたが、失業して周防の街に20年ぶりに娘の美奈子と戻ってきます。妻はボストンへ留学中。ひとり暮らしをしていた父と二世帯住宅で同居することになります。
誰が何をしたのか、一晩たてば街中の人に知れ渡ってるような、外の世界を知らないくせに自分たちの街が一番だと思い込んでる人々、おせっかいなだけの親戚連中がいる小さな田舎町。
そんな閉鎖的な街でヨージは久しぶりに旧友に囲まれながらも自分の居場所を見つけることができないまま、負けることもできないまま終わってしまった青春の「夢」に思いを募らせることになります。
それぞれの境遇でがんばる旧友と、20年前と大きく変わってしまった故郷、そして試合に負けても応援し続けてくれていたザワ爺の死・・・。様々な光景にヨージは本当に自分がしたかったことを見つけ、そして最後の最後でようやく終わってなかった自分の夢に終止符を打つことができたのでした。


いつものように重松清の小説の主人公は中年の男性。この作品も、主人公のヨージがなくした自分への自信と指針を取り戻す再生小説であり、かつての野球少年が一度はあこがれた甲子園につながっていく高校野球小説であるとも言えます。


この本を読んで思ったのは、やっぱり人間って「負ける」ことが許されないとつらいよねってこと。最近は「勝ち組」とか「負け組」とか言って、一部の成功者ばかりを崇める風潮があるけど、ほとんどの人間が勝ったり負けたりしながら平凡に生きてる。はたして「勝ち組」と呼ばれる人たちが本当に人生の勝利者なのでしょうか? そんな人生が本当に幸せなのでしょうか。
負けることが許されない人生なんてあたしはまっぴら。負けてもいいじゃない。逃げたっていいじゃない。誰もそんなにつよくない。
一般の企業でも能力主義とか言って、勝ち続けることだけが求められています。うちの会社もそう。そんなの息がつまる。あたしは負けたい―――――――。
そんなことを読みながら思ってみたりしました。


さて評価ですが、★★★★☆にしたいと思います。