『架空通貨』を読みました。
正直ね、あんまり期待してなかったんです。どうせまた銀行モノかなぁって。
そしたら、今回はぜんぜん違いました。
山間の小さな田神町は「田神亜鉛」という企業の城下町で、そこだけで流通する「田神札」という私鋳貨と、その田神亜鉛を舞台に行われているマネーロンダリング、計画倒産。それによって引き起こされてしまう、ひとつの町の崩壊・・・。フィクションとはわかっていても、お金の持つマイナスの力の怖さを感じてしまった作品です。
今回のお話は一企業が発行した田神札を指して『架空通貨』というタイトルになってるのだけど、それは国が発行する「公鋳貨」も同じで、結局はその通貨の裏づけとなっているのが発行者の「信用」に他なりません。
つまり国が発行するお金であっても、国の信用が失墜したら、この物語に出てくる田神札のようにただの紙切れになってしまって、その国の経済は崩壊してしまうわけです。かつての中南米の国々でのハイパーインフレとか、一時期のロシアのルーブルみたいに。今、日本の財政って大量の赤字国債で支えられています。この状態で少子化が進んで、国の財政が(もうとっくに破綻してるのだけど)赤字国債を出しても支えきれなくなってしまったら、この物語の田紙町とまったく同じように日本全国がおちいってしまう、そんな恐怖をまったくフィクションとは考えるべきではないのだと思います。
確かに物語は大雑把だし、主人公は結局何もしてないし、マネーロンダリングの依頼元の暴力団は全然怖くないし(結局、何も手出ししてこなかった)、そもそも役所は何をしてるのだろうかとか、粗さが目立つ作品だけど、星3つ★★★☆☆。
一気に読むと疲れると思うけど、休み休み読めば、けっこう楽しめる作品だと思います。