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感情があるから人間。:マドンナ

このブログでレビューするのは初めてかもしれませんが、実は好きな好きな作家さんです。奥田英朗さん。
最初に読んだのは『最悪』という本でした。不渡りを出す寸前の鉄工所社長と、銀行員、若いチンピラの三人が、たまたま出会った瞬間に事件が起きて、どんどん深みにはまっていくというお話でした。
次に読んだのが『邪魔』という話。平凡な主婦が夫への不信をきっかけに予想もしない事態にはまっていくという話です。
どちらも、平凡な人間関係の中でひとびとが抱く感情の衝突とか、葛藤とか、そういうものが自分の思うのと違う方向に動き出してどうしようもなくなってしまう、感情のコントロールを失いつつある人間の滑稽さとか恐ろしさとか、そういうのを描いた作品で、これぞまさに奥田秀朗さんの真骨頂という感じでしょうか。


で、今回読んだのは『マドンナ』。中年のサラリーマンを主人公にした短編集なんですが、どれも見事と言わざるを得ない奥田ワールドが展開されています。

中でも一番共感したのは「ボス」というお話。古い体質が染み付いた営業部の抜擢されたエリート女性部長が、合理性を追求しくために改革を断行していきます。当然、変化を求めない(というか、男性の価値観が支配した慣習の下で仕事をしたほうが楽だから)男性の部下の反感を買うんだけど、女性部長のやり方がまったく隙がなくて文句のつけようがない。
でもその部長が強引に設定した毎週水曜日のノー残業デーは、千葉ロッテの黒木投手の登板に合わせたものだったことが、反対派筆頭の次長に見つかって、その次長が、部長の「人間らしさ」に触れて、ちょっと安心する・・・という話です。

あたしも仕事とプライベートは完全に分けてて、会社を出たら会社の人間の顔を見るのもイヤな人。わざわざ会社の人間が住んでない沿線を選んだくらい。
もちろんあたしはこの女性部長のような完璧な仕事はできないけど、会社を根深く蝕む古い体質と毎日必死に戦ってて、うまくいかないことばかりでついつい下を向いて歩いてしまってるあたしをちょっとだけ「応援」してくれた。そんな気がしました。


感情があるから人間。
だから、ぶつかるし、愛し合えるのだと思うのです。


全編、派手さはまったくないけど、どれも秀作そろいで、ぜひ手にとってほしいと思います。
限りなく5つに近い、星4つ★★★★☆。