元銀行マンの牧村伸郎は、上司に放ったたったひと言でエリートの道を棒にしちゃって、プライドの高さから辞表をたたきつけるんだけど、そのプライドの高さが災いして、再就職先も見つからない。で、結局は日々の口糊を稼ぐためだけに「一時的に」タクシーの運転手になるんだけど、ずっと人生をやり直せたら・・・ってことばかり考える。けど結局どうにもならない・・・・っていうお話。
最後の数ページで意外な人物を乗せて、ちょっとだけ反撃するんだけど、盛り上がるのはここくらいで、あとはず〜〜〜っとおんなじような話が繰り返されて退屈だなぁって思いながら読んでました。
もちろんね、同じことばかりじゃなくて、同じ毎日の繰り返しの中で、伸郎は何かに気付いていくし、タクシー稼業にもだんだん身が入ってくるんだけど、なんかテーマが見えないってゆうか。
きっと荻原さんが書きたかったことは、本当は物語が終わってからの伸郎の生き方なんだと思うんですよね。
人生はやり直しはきかない。数多くの選択---それは二者択一だったり、多くの選択肢の中からどれかひとつを選ばなきゃいけないのを経て、今の自分があるんだと思う。その選択が間違ってるとか考えたって仕方がないし、きっと選択は「間違ってない」に違いない。だから前を見て生きていかなくちゃなんない。でも人間は強くないから、どうしても過去ばかり悔やんでしまう。
でもそれじゃダメなんだよね。
もしあのとき、こうしてたら・・・。
もしタイムマシンがあったら、あのときに戻りたい・・・。
もし生まれ変わったら・・・・。
そんな誰もが、そんな「if」を抱きながら生きてる。そのifっていうのは、絶対に叶わないから、それは前向きなパワーに変えていかなくちゃいけない。
そんなことを書きたかったのかなァって思うんです。
でもね。
それにしてはページかけすぎ。
『明日の記憶』のあとの長編だったから期待したんだけど、ちょっと期待はずれ。もちろんさすが荻原さんっていうユーモアと文章力はさすがなんだけど。
というわけで、星は3つ★★★☆☆までかな。