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冤罪の作り方、教えます:死亡推定時刻

死亡推定時刻
死亡推定時刻
posted with amazlet on 06.07.22
朔立木
光文社 (2006/07/12)

てっきり、真犯人を探すミステリー作品とかリーガルサスペンスとかだと思ってたんです。
そしたらぜんぜん違いました。フィクションなんだけどノンフィクションみたいな作品。いい形容詞が見つかりません。ドキュメンタリー読んでるみたいな錯覚を起こしてしまうほどリアリティーの高いお話です。それもそのはず著者は現役弁護士。でもその卓越した文体は普通の小説家のレベルをはるかに超えています。


山梨県の建築会社の社長の一人娘が誘拐される事件が発生します。警察の指示に従ったために犯人への身代金の受け渡しに失敗し、その後被害者は変わり果てた姿で森の中で発見されます。
ここからが背筋が寒くなるような話になっていきます。これがまさに冤罪のレシピ。
「作り物でしょ?」だなんて簡単に割り切れない、きっと現実はこんなことになっているに違いない。いつ自分が、あるいは自分の身内が、凶悪犯罪者の被疑者に仕立て上げられてしまうかわからない恐怖を感じてしまいます。


正義ってなに?
真実ってなに?
人権って?
法律って?



警察も弁護士も検事も裁判官も、誰も真実なんて関係ない。優先されるのは身内の都合。
以前ご紹介した中嶋博行さんの書くリーガルサスペンス作品でも散々書かれている現代の法曹界の矛盾や問題点ですけど、それをよりリアリティーを増して、わたしたちに警告を発している作品です。
今、日本でも陪審員制度の導入が控えていますが、今まで以上に思い込みによる冤罪が増えてしまうのではないか心配になってしまいました。


法律にたずさわる人じゃなくても、広く一般の人に読んでほしい作品。
ちょうど9月にフジテレビでドラマ化するらしいので、ぜひ観ていただきたいです。


評価は★★★★★。文句なしです。