浅田次郎さんの過去の作品『地下鉄(メトロ)に乗って』があたしの浅田次郎さんの小説としては初めてでした。というのも、浅田次郎さんのエッセイ『サイマー!』を中京競馬場でのサイン会で購入しているからです。それが浅田次郎さんの作品を読むトリガーでした。
さて、今回は再雇用して子会社の役員として移籍した竹脇正一さんが送別会が終わり、自宅のある荻窪が終点の丸ノ内線の新中野駅へ向かう列車内で意識を失い、そのまま集中治療室に担ぎこまれる。正一は走馬灯のように思い出の場所やシーンをさまようのです。丸の内線と銀座線を利用して。これは先述の「地下鉄に乗って」とイメージが重なっています。
竹脇正一は捨て子でした。高校卒業まで児童施設で生活をしていたので、両親の記憶どころか、自分の生年月日も本当の名字も知らないでいる。
子供のときに事故で亡くした長男の春哉。同じ施設で育ったトオル。隣のベッドの「カッちゃん」。東京大空襲で生き残った後の子どもたちのリーダー的存在だった峰子らが代わる代わる登場しますので、読者を退屈させません。むしろ、楽しくもあります。まるで正一の過去に読者を連れて行ってくれるような感覚になります。
舞台は敗戦から二十数年しか経過しておらず、戦争がまだ最近のことのように描かれる、そういう物語が大好きなんですよねー。
ぜひお手にとってください。損はさせません。
つぎー。