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等身大の戦争小説:僕たちの戦争

僕たちの戦争
僕たちの戦争
posted with amazlet on 06.04.20
荻原 浩
双葉社 (2004/08)
売り上げランキング: 70,691
おすすめ度の平均: 4.22
5 すごくよかった。
4 戦争はいやだ・・・
1 これは中高生向けのコメディ小説ですか?


荻原浩さんの『僕たちの戦争』を読みました。
この前に読んだ『ママの狙撃銃』がちょっと物足らなかったから、これにはとっても期待してました。
結論から言っちゃうと、予想通りいい作品でした。言い方を変えちゃうと、その期待を超えるものではなかったって言えなくはないんだけど、それはあたしの期待がとってもとっても大きいからなのでしょうね。


物語は2001年9月12日、ニューヨークの同時多発テロの翌日から始まります。
いかにもその時代の若者って感じの尾島健太は、サーフィンに出かけて大きな波に巻き込まれてしまって、気がつくと昭和19年(1944年)にタイムスリップしてしまいます。
それと同時に1944年9月12日、戦闘機の飛行訓練中の石庭吾一は急に機体のコントロールを失ってしまいまい、健太と入れ替わるように2001年にタイムスリップしてしまうのです。
ふたりは瓜二つだったので、それぞれ飛ばされた世界で入れ替わってしまいます。昭和19年の吾一が平成の世を、平成の健太が昭和19年を、戸惑いながら生きるしかありません。お国のために命を投げ打ってた戦時中の若者には平成の「退廃ぶり」はどう映ったのでしょうか。自由と便利さと氾濫した情報に流されている平成の若者には、戦時中の狂った時代はどう映ったのでしょうか。


ユーモラスな荻原さんの作風はちょっと控えめになってるけど、荻原さん独特の「軽快さ」と「ユーモラス」は健在です。何度も笑ってしまうシーンがありました。
その軽さの中で健太がだんだんと一人前の青年に成長していきながら(ハードボイルド・エッグに似てますね)、それと並行して吾一が健一の恋人のミナミに「人を愛する意味」を見出していく様子をうまく対比して描いています。
つまり、昔も今も愛する人を守りたいという思いは一緒。それがこの作品で描きたかったテーマなんだと思います。


はっきり言っちゃうと、どこにでもあるタイムスリップもの。戦時中に健太がである人々が、彼が現代でよく知る人々の関係者たちばかりというご都合主義も目立ちます。でも単なるSFではないのです。
荻原さんは何も語ってないけど、それは単なる偶然じゃなくて何らかの因果関係があるんだと思うし、歴史の意思だっていうふうに思うこともできる。そう感じさせるふしぎな説得力がこの物語にはありました。
その歴史の意思は、健太と吾一を同一化させます。それは最後の最後、ミナミのお腹に宿る命として象徴的に描かれています。


一番印象的だったのは健太が最後まで「逃げること」を考えていたっていうこと。だって誰だって死にたくないもん。健太の素直なキモチがきっと人間の本心で、きっとそれは昔の人も同じだったんじゃないかな?

生きた時代が違うふたりの若者から見た戦争・・・。
物足らないっておもうひとも多いかもしれないけど、イデオロギーとか愛国心とか悲壮感とかそういうのをあえて遠ざけて、あえて軽薄な若者を描いたことで、逆に本質を描こうとしたんだと思うんです。
だからこれは等身大の戦争を描いた小説なんです、きっと。



で、肝心の評価なんですけど、★★★★★。ちょっとオマケ気味だけどね。
できれば、文子さんと健太のロマンスがもっとあったらよかったなぁって思うから。そのしたらミナミが吾一に抱いた違和感というか不思議さって言うかがもっと強調できたと思うし、ミナミのおなかに宿った命に別の意味を持たせて、その価値がもっともっと重くなったって思うから・・・。