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そんなに夏っぽくない:翳りゆく夏

翳りゆく夏
翳りゆく夏
posted amazlet on 06.08.28
赤井 三尋
講談社 (2006/08/12)

個人的には超低レベルだったと思ってる第49回江戸川乱歩賞は、この『翳りゆく夏』と『マッチメイク』のダブル受賞。あたしは先に『マッチメイク』を読んでたんですけど、これがホントひどい内容。プロレスファンであればその内容の薄っぺらさと稚拙さと現実感のなさに閉口すると思います。この程度のレベルが受賞作なんだから、ダブル受賞のもう一方もたかが知れてるなぁって思ってました。
で、実際に『翳りゆく夏』を読んでみてどうだったかなぁっていうと、『マッチメイク』ほどひどくはなかったけど、低レベルという評価を覆すまではいきませんでした。


けっこうありがちなマスコミ(新聞社)が舞台のミステリーで、20年前の誘拐事件を再調査して意外な犯人が見つかるという、これもありがちな内容。
そういう点で目新しさはまったくといっていいほどなくって、驚くような大どんでん返しもなかった・・・・あ、いえ、大どんでん返しはありました。あるにはあったんですけどすごく唐突で、これも過去の江戸川乱歩賞にありがち・・・。


お話の導入部分はとってもじょうずでした。
いきなり東西新聞社の社長室。社長が武藤厚生人事局長を呼び出して、「誘拐犯の娘が新聞社の記者に内定」という記事がゴシップ週刊誌に掲載されることを責めます。
誘拐犯はすでに20年前に死亡しててそのまま事件は解決したことになって、もう公訴時効がすぎていましたが、社主はこの事件の再調査を社長に命令して、その調査に白羽の矢が立ったのがかつての敏腕記者で、とあるトラブルで窓際に追い込まれている梶という男でした。
この梶が調査に乗り出すと、いろんな疑問がいっぱいでてきて・・・・。そこからがイマイチ。


周辺取材の方法とか警察と記者との関係、被害者の遺族の気持ちとか、さすがフジテレビの現役記者だけあって、リアルだし描き方もうまい。
文章の構成も飽きさせないし、伏線の張り方も巧みだって思います。変に凝ってないし、かといってバレバレでもない。
だからこそ、最後の意外な犯人・・・が唐突すぎて残念。
よく二時間サスペンスであるような感じ。主人公が犯人と思った人物の前でいろいろ話してわなをかけ、その人物がわかって気づかずにノコノコ現れた背後から主人公が「まさかあなたが本当に犯人とは信じたくなかった」みたいなセリフを言うのです。で、事件の真相がすべて明るみにされるのだけど・・・。
(以下、ネタバレ)確かに自分の子を事故で死なせてしまって半狂乱になった武藤の妻が病院から同じ血液型の赤ちゃんをさらってしまったのが「誘拐事件」のきっかけとしてありえなくはないけど(それでも誰も見てないというのはありえないとも思うけど)、それを偶然見かけた看護婦が、脅迫実行犯の堀江に伝えて、堀江がそこから完全犯罪の計画を立てて脅迫電話して、九十九に現金を受け取らせて・・・って計画を実行するまでをするまでの時間が短すぎて、これじゃいつ準備したの?って感じで、やっぱり無理がありすぎますよね・・・。(ネタバレ終わり)
それと社主が再調査を命令した意図も最後までわからずじまいでした。


もしかしたらこれは致命的なのかもしれないけど、主人公と社長以外の登場人物に魅力を感じないんですよね。渦中の人のはずの犯人の娘の緋呂子がなんか他人事のようにしてる。その心理もよくわからないし、なんかオジサンから見た「カワイイ女の子」をそのままイメージしてる気がする。それに重要な証言者の照代がどうして風俗嬢でなきゃいけないの?(まさかドラマ化を意識してるんじゃないでしょうね?)


あと、タイトルも。翳りゆく夏っていうもったいぶったタイトルなのに、物語を読んでてぜんぜん夏っぽくないんです。


そんなこんなで、評価は2に近い★★★☆☆まで。
ちなみに『マッチメイク』は無印でした。