momo☆彡のスタイル。II

Welcome to momo's weblog! Do not hesitate to leave your footprints on this site.

金融ミステリーの傑作、かもしれない。:株価暴落

株価暴落
株価暴落
posted with amazlet on 07.03.22
池井戸 潤
文藝春秋 (2007/03)
売り上げランキング: 23725
おすすめ度の平均: 5.0
5 推理小説なのか経済小説なのか?いずれにせよ面白い
5 面白い!


今や、日本の金融ミステリーの第一人者と言っていい池井戸潤さん。最近は金融ミステリー以外でも傑作を書いてますけど、やっぱり池井戸さんって言えば金融モノ。


白水銀行の審査部には、破綻懸念先になった取引先が回されてきます。行内ではそれを「入院」と言い、取引先のことを「入院患者」と呼ぶことになっています。その入院患者で自主再建を目指していた大手スーパーの一風堂で連続爆弾事件が発生するのです。一風堂の株価は大暴落し、白水銀行は救済融資をするかどうかの選択に迫られます。審査部の坂東調査役は、慎重に融資の是非を検討する一方で、企業テロを仕掛けている犯人に迫っていくのです。


こんな風に書いてしまうと、陳腐なサスペンス作品みたいに思われてしまうかもしれませんけど、巨大スーパー、巨大銀行内の確執や利害の衝突、企業テロ犯人を追いかける警察、巨大スーパーの出店の陰で生活を脅かされる零細商店の現実など、暴落する株価をストーリーの軸となって、多面的にかつシンクロしながら物語が進んでいくのです。
物語自体はかなりのボリュームですし、とっつきにくそうなテーマなのに、巧みな構成や特徴ある登場人物の描き方のおかげで、中だるみなく一気に読み進めることができました。まさにページをめくる手が止まらないという感じです。
このお話の中で綴られる巨大企業のエゴ、銀行の論理はきっととてもリアル。銀行が自らの保身のためだけに不良債権とすべきな融資先の無駄な延命にだけ執着し、問題の本質にメスをいれずいたずらに問題の先送りだけしか考えない様は、銀行がみずから銀行であることを放棄してしまった今の日本の金融界を見事に表していると思います。


主人公の坂東のような銀行員はきっといないでしょうし、爆弾犯人の動機にはちょっとムリがあるかなぁという気はしましたけど、金融サスペンス、推理小説、どちらの面から見ても秀逸のデキで、ここは文句なく★★★★★の満点でいいと思います。