読売新聞で2005年に連載していた作品の単行本です。
小川洋子さんの作品は『博士の愛した数式』以来2冊目なんですが、小川さん独特の作風にかなり惹かれはじめています。
時代は1972年。高度経済成長末期でオイルショック直前の日本が一番元気だった頃、きっと未来がキラキラと輝いていた頃、今よりもずっと時間がゆっくり流れていた頃。
主人公の朋子は中学1年生。家庭の事情で芦屋にある伯父の家に預けられるのですが、そこで出会った美奈子ことミーナ、ハンサムな伯父さんやローザおばあさんやお手伝いの米田さん、そしてコビトカバのポチ子たち、素敵なみなさんに囲まれながら、一生忘れられないキラキラ輝いた1年間を過ごしたお話です。
ミュンヘンオリンピックの男子バレーの選手に夢中になったり、ずっと年上の男性にあこがれたりとか、12〜3歳の女の子等身大の姿がとても懐かしく、そして癒されます。
ミーナの話す言葉があまりに大人びすぎてるのが気になるのですが、喘息で入退院を繰り返して、文学の世界に没頭してマッチ箱の絵から物語を空想するミーナだからこそ、ああいう素敵な言葉をつむぐことができたのかもしれませんね。
物語に出てくるフレッシーというジュースは、プラッシーという昔お米屋さんで売ってたジュースを連想させます。
あたしが10歳くらいの頃、家でプラッシーを取ってもらいたかったけど、どうしてもそれが親に聞き入れてもらえなくて、たまに遊びに行くおともだちの家でお呼ばれしてとっても感動したことを思い出しました。
評価は★★★★☆。