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直木賞受賞後第一作:赤い指

赤い指
赤い指
posted with amazlet on 06.07.30
東野 圭吾
講談社 (2006/07/25)

容疑者Xの献身』で直木賞を受賞した東野圭吾さんの受賞後第一作目です。
最初は気がつかなかったのだけど、これって加賀恭一郎シリーズなんですね。
加賀恭一郎シリーズって、あたしは実は『悪意』くらいしか読んだことがありません。シリーズものってあんまり好きじゃないので。
だから『容疑者Xの献身』もそうだけど、シリーズものって知ってたら手を出さなかったかもしれません。
そういう意味ではいい方向でだまされたのかもしれません。
物語を途中まで読まないと、加賀恭一郎シリーズだって気づかないのも、うまいというかずるい(笑)。


前原昭夫と八重子は、自分の息子が犯した悲惨な事件を隠そうとして、おろかにも自分の母親に罪をなすりつけようとします。その夫婦のうそを加賀恭一郎が暴こうとするのですが、加賀はそれを家族たち自身の口から明かそうとさせます。そして最後には意外な真相が昭夫の前に明らかになるのです。
この物語はいわゆる「ホワットダニット」の単純なお話ではありません。真実は既に読者の前に提供されていて、それをどう犯人が取り繕って、それに対してどう加賀が立ち向かうのか。そして一歩一歩真実に迫ってくる加賀に対して昭夫の心がどう揺れ動くのかが物語のテーマです。
初期の東野さんの作品は「ホワットダニット」にこだわった作品が多い印象がありますけど(だからナベジュンさんがいつも「人間を描いてない」っていうんでしょうけど)、近年の作品はかならずその背景を丁寧に描いてて、事件そのものよりどうしてその選択を選ばざるを得なかったのかを丁寧に深く描いていくようになっています。
その加賀自身の家族についても物語と並行して描かれていて、そのやり取りは「家族のありかた」を描いてきた東野圭吾さんならではのものではないのかと思います。
家族。最近の東野圭吾さんがずっと大切に描いているテーマです。


難を言えば、加賀恭一郎はスーパーマンすぎて現実味がなくて、彼とペアを組む親戚の松宮があまりに平凡すぎて、との対比によってますますその現実味のなさが強調されてしまってます(ただ松宮の存在が恭一郎と父親の、他人からは窺い知ることができない二人だけの絆を描くのに欠かせない存在になってるのだけど)。
さらに八重子と息子=真犯人の直巳にまったく救いを感じないことも不満です。直巳だってどうしてそんな風になってしまったのか、八重子だってなぜかたくなに昭夫の両親を受け入れることができないのか、きっと理由があるはずなのに、そこをあっさりと書きすぎてて彼らの立場を理解することができなかったことです。
それと罪を擦り付けられることになる母親も、ネタバレになっちゃうから書けないけど、そんなことまでできるのかなぁっていう気がしました。無理がある。
扱っているテーマは重いものなのに、だから読み終わったら、ちょっと薄っぺらい作品だなぁっていう感想を持っちゃいました。
直木賞受賞後の作品だから期待したんだけど、ちょっと肩透かしされた感じがします。


だから評価は★★☆☆☆。気持ちは星2.5ってところ。厳しすぎる気もするけど、他の東野作品と比べるとやっぱり見劣りすることは否めません。