momo☆彡のスタイル。II

Welcome to momo's weblog! Do not hesitate to leave your footprints on this site.

母性愛とは何なんですか?:子宮の記憶―ここにあなたがいる

子宮の記憶 <ここにあなたがいる>
藤田 宜永
講談社
売り上げランキング: 6575


主人公は17歳の島本真人。医者の息子として何不自由ない生活を送っているけど、常日頃から直情型で過干渉の母親との折り合いが悪く、ある日、母親に乱暴して親から二百万円の大金を奪って家出をしてしまいます。
特に行くあてのない真人でしたが、生まれた直後に自分を誘拐して1ヵ月半だけ「母親」だった女性に会いに行こうとします。もしその女性に息子としてそのまま育てられていたら自分はどうなっていたのか・・・。小さいころ、もし自分がここの子じゃなかったらとか、もしかしたら本当の親は別の場所で暮らしてるのかもしれない・・・なんて想像したこと、誰にでもあると思うけど、真人もきっとそんな軽い思いから、その女性を探し出そうとしたのでしょうか。
果たして幸運なことに、その女性は愛子といい、真鶴海岸ですぐに会うことができました。最初は一目見るだけのつもりだったのですが、真人はその女性が経営する食堂で身元を偽って住み込みでアルバイトをすることになったのです。かつて愛子が自分に名づけた「良介」として・・・。こうして愛子と良介の生活が始まりました。
愛子はすでに結婚していて、亭主の連れ子(って言っても、その子は亭主の前の奥さんの連れ子だから、誰とも血はつながってない)の美佳がいます。「良介」は美佳の傍若無人な性格に手を焼きますが、自分の心の中に住む何かと共鳴するかのように、美佳に惹かれていきます。誰も信用しなかった美佳も次第に心を許していきます。
「良介」の登場とともに愛子は明るくなり、愛子と「良介」はただの店主とアルバイトという関係ではなく、まるで親と子のような不思議な空気が漂うようになるのです。
そして、女ともだちの自殺、本物の母親の急逝、身元を明かさざるを得なくなった真人の苦悩を経て、最後に真人は愛子を守るかのようにある行動に出ます。それはきっと真人がひとりのおとなの男として成長したことを意味するのかもしれません。


愛と憎しみ、母性愛、そして母親というものをあらためて考えさせられた一冊でした。
藤田 宜永さんというとわりとドロドロした作品が多いらしいのだけど、この本は(濡れ場は多少あるけど)、複雑な親子関係や男女関係を描きながらも、読書感がすがすがしい作品に仕上がっています。
あたしもさんざん親不孝してきたから、読んでてちょっと辛い場面もあったりする。あたしは親になったことがないから、親の気持ちがまだわかんない。だから真人の両親の気持ちがあんまり理解できないけど、自分の子供に対して過剰な期待をして、自分の思い通りになってくれないと癇癪を起こす真人の母親の心理はわからなくもない。こうやって爆発できるだけ真人はまだ恵まれてるし。結局親の金があるから好きに生きていられるのに、その自覚がないだけまだ真人も甘い。世の中の多くのひとはそこから逃げたら自分で生活をしていなかくちゃなんないのに。だからこの物語のあと、大きく成長した真人に再会したいなって思います。


★★★★★の満点。