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作家の眼がうなる佳作:看守眼

看守眼 (JOY NOVELS)
看守眼 (JOY NOVELS)
posted with amazlet on 07.07.25
横山 秀夫
実業之日本社 (2007/07/20)
売り上げランキング: 1638


ようやく新書版が発行されたので即購入しました。これ、長編か連作短編かと思ってたんですが、実は完全な短編集だったんですね。
横山秀夫さんといえば警察小説っていうイメージがあるのだけど、警察を題材にしたのは表題の「看守眼」と「午前五時の侵入者」だけで、あとはフリーライター、裁判の調停員、新聞社の整理部、知事の秘書という職業の人々を取り上げたミステリー作品が収められています。目立たない縁の下の力持ちの仕事や心理にスポットを当てたドラマが描かれているのですが、さすがどれも横山秀夫ってうならせる作品ばかりです。
特に表題の「看守眼」は面白かったです。看守の近藤の息遣いまで聞こえそうな緊張感と、警察官に劣等感を抱く事務職員の心の機微がうまく混ざり合って、警察という組織の独特な雰囲気が醸し出されている気がします。
そのほかでは、裁判の整理部のお話の「静かな家」も、さすが元新聞記者の作者だけあって、新聞編集の臨場感や緊迫感が伝わってきますし、ミステリーの内容も綿密に練られていて読み応えがあります。
どの作品も中篇や長篇にしても立派に成立させることができるだけの内容がありながら、その一部だけを切り取って、短編として巧みに成立させているところに、横山さんの筆力が伺えますね。


評価は★★★★☆。