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目の前にある「昭和」:地下鉄(メトロ)に乗って


浅田次郎さんの『地下鉄(メトロ)に乗って』を読みました。浅田次郎さんの初期の作品で、吉川英治文学新人賞に輝く名作です。


表紙をめくると「すべての地下鉄通勤者に捧ぐ」って書いてありました。あたしは地下鉄ってじつはあんまり好きじゃないんだけどね。上京した頃、ガッコに行くのに営団地下鉄東西線をいつも利用してたんだけど、当時は冷房車両がなくて(今では誰も信じないと思うけど)、もうのすごく混んでて嫌いになっちゃった。「国電」から一瞬「E電」という名前になって結局「JR線」っていうつまんないネーミングになったJRでも冷房車両がついてるのが半分くらいの時代だったけどね。あん、でも当時は今ほど暑くなかったような気がするんですよね〜。もう二十年前の話だけど。もちろん昭和の時代。


で、この『地下鉄(メトロ)に乗って』は、それよりももっと昔の時代にタイムスリップしてしまうお話。あ、でもSFじゃないです。
兄の自殺をきっかけに、父親を憎んで家を飛び出して生きてきた主人公の信次は、ある日地下鉄の出口からとか、銀座線に乗ってるときに、いきなり昭和39年とか、戦後間もない銀座とか、戦時中の銀座とかにタイムスリップしてしまうようになってしまいました。そこで偶然で「アムール」と呼ばれる青年に出会います。信次はやがて憎んでいた父親の意外な人生を知ることとなって、やがて兄の自殺のきっかけとなった真実を知り、最後には愛する女性との悲しい別れが待っていました。
その兄の自殺の理由がとっても悲しくて、最後の愛する人とのお別れのシーンがとっても切ないのです。本当に涙なくては読めませんでした。


お話自体もとってもすばらしいお話なのですが、もっともっとすごいなって思うのは、浅田さんが描く「昭和の風景」なのです。
ちょうど「ねじの回転−February moment」を読んだばかりで、昭和初期にタイムスリップするお話ってそんなに珍しくはないけど、あたしが読んだことがあるものとは比べ物にならないくらい!
昭和初期の活気あふれる町の風景やそこにいた生き生きとした人々の様子が丁寧に描かれてて、大げさじゃなくて本当に、読んでるあたしまでタイムスリップしてしまうような錯覚をしてしまうのです。まさに目の前にあるような感覚
そんな昭和初期を舞台として、物語の中盤はとっても盛り上がっていくので、最後の悲しい結末がより強調されていくのです。


ああ、もう、あたしの文章力では、この本のすばらしさを伝えられないのがもどかしすぎます。
文句なしで、★★★★★


あたしがはじめて東京に遊びに来た頃、もう25年位前でまだ小学生でした。
まだテレビ東京東京12チャンネルっていう名前で、JRはまだ国鉄で、RFラジオ日本はまだラジオ関東で、山手線はまだ全身うぐいす色のペンキで塗られてて・・・、そんな頃、まだ走ってた銀座線の様子が出てきました。やまぶき色の小さな車両は、走ってる途中で車内の照明が消えたりしたんだよね。
なつかしいわぁ。