momo☆彡のスタイル。II

Welcome to momo's weblog! Do not hesitate to leave your footprints on this site.

わかりやすいけど、わかりにくい:あした天気にしておくれ

あした天気にしておくれ
岡嶋 二人
講談社 (1986/08)
売り上げランキング: 65,838
おすすめ度の平均: 5
5 傑作です!

岡島二人が『焦茶色のパステル』で第28回江戸川乱歩賞を受賞する以前の作品で、その前年の同賞で最終候補まで残った傑作です。
焦茶色のパステル』と同じく、競走馬をテーマにした作品ですけど、こちらは誘拐+競馬というテーマで、よりエンターテインメント色の強い作品だと思います。


北海道のセリで3億2千万円の価格がついたサラブレッド「セシア」。セシアは4人の共同所有なのですが、この所有者の1人鞍峰の牧場で起きた不慮の事故で脚を骨折し、競走馬として使い物にならなくなってしまいました。この事実を隠すために、鞍峰とそのスタッフの朝倉、牧場長の望月たちは、セシアの狂言誘拐を企てます。身代金は2億円。
しかし彼らに何者かから脅迫状が届くのです。その人物は狂言を見抜き、その身代金を奪い取ろうとします。果たしてその人物はどうやって身代金を奪おうとするのか、そしてその人物は・・・・?
で、最後には思いがけない方法で、大金が奪われる・・・。


というお話です。


トリックはそんなに難しくはなくて途中でわかってしまうのだけど、それ以前に、この物語が書かれた時代---昭和56年---の競馬のことを知らないと、ぜんぜんピンとこないと思います。
あたしもこの当時の競馬のことはほとんど知りません。
昭和56年というと第1回ジャパンカップが開催され、アンバーシャダイ有馬記念を勝った年です。
このお話の最大のトリックは、この当時の馬券のシステムに根ざしているのです。
だからトリック自体は難しくはないけど、その当時のシステムのことを説明されてピンとこないと、ぜんぜんわかんないかもしれないのです。


と書いたけど、ストーリーは読み手をグイグイ引きこんでいくし、後半の展開は見事としかいいようがありません。いかにも怪しそうな女性があたしたち読者も煙に巻いてくれます。実に巧みです。
もし今、このお話を焼きなおすとしたら、どういうトリックを使うことになるのかな?
岡島二人さんはもうとっくに解散しちゃってるのでもうそれも叶わない夢なんだけど。


評価は★★★★☆。
星3つだった『焦茶色のパステル』より競馬の知識は必要ではないと思うけど、やっぱし読み手を選ぶことには変わりないし、逆に競馬に詳しい人にはちょっと物足らないように感じるように思いましたので。
あとタイトルも・・・。