おすすめ度の平均:才能がない
壊れたものを壊れたように、ではなく
家族の難しさ
以前、『星々の舟』を読んだとき、この『空中庭園』がよく似てるっていうのを聞いたのと、小泉今日子さん主演で映画化されたっていうのもあって、大きくはずさないだろうなぁっていう“計算”で買いました。
連作短編で、前の章の登場人物が次の章の主人公になって、語り口調で物語をバトンのように繋いでいくっていう構成。
最初のお話「ラブリー・ホーム」はそこそこ面白かったんだけど、その後の話になってきてだんだんテンションが下がってきました。
表面的には平和な家族も中はみんな好き勝手なこと考えてて、秘密は作らない主義の家庭は実は秘密だらけ・・・っていうかなりシニカルなお話です。テーマもそんなに珍しくもないし、やり方によってはすごく楽しく読めそうなお話なのに、出てくる家族が全員が薄っぺらくってバカばっかで救いがない。どうせならもっともっとブラックに振っちゃえばいいのに、その技量も度胸もこの作者にはないのかもしれない。
あと多くの若い作家さん(っていっても角田さんとあたしはほとんど年齢かわんないけど)に思うことなんだけど、SEXを軽く扱いすぎてる。確かに世の中の貞操観念なんてとっくに消えうせてしまってるかもしれないけど、それが正しい姿でもないでしょうし、そういうのに擦り寄ってやたら寝るシーンを多用する。まるで外国人たちがハグをするような軽さでSEXする。この作品でもどいつもこいつもやたら簡単に「ホテル野猿」に入っていく。別にそういう行為を否定してるわけじゃないけど、そこに必然性がないのなら書く必要もない。必要ある/なしじゃなく、そうしたほうが楽だからすぐにそっちに頼ってるだけのような気がしてならないのです。
オチもなければ、何が言いたいのか、何が書きたいのかぜんぜん伝わってこない。薄めの本なのに、読み終わるまでにこんなに時間がかかったのはあんまりないし、最後まで読み終えた自分を誉めてあげたいくらい。
でもこの作品、評判いいんですよね。
この『空中庭園』って、第128回の直木賞候補になってて*1、この128回は受賞作品なしという結果だったのですね。同じ回の受賞候補にエントリーされていたのが、奥田英朗さんの『マドンナ』、横山秀夫さんの『半落ち』っていうのだから*2、決してレベルは低くないと思うのです。ってことはやっぱり評価受けてるってことだよね。
世間の評価とあたしの評価。このギャップ、あたしの読書の才能のなさなのなぁ・・・。
少なくともこの「空中庭園」が受賞することはないよなっていうのだけは間違ってないのかもしれないけど。
これだけで嫌ってしまうのももったいないから、『対岸の彼女』は読んでみようと思っています。
あと、解説が石田衣良ってのもちょっとイラッてしてしまった。あたし池袋ウエストゲートパークみたいな作品大嫌いなのよね。
(-ε-)ブーブー
というわけで、厳しい目で、★★☆☆☆まで・・・。