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親を、子を、妻を、愛する気持ち:天国までの百マイル

ずっと読みたかったのだけど、なぜかどこの本屋さんにも置いてなかったこの本を、昨日偶然立ち寄った隣の駅の本屋さんで見つけて飛びつきました。

天国までの百マイル
天国までの百マイル
posted with amazlet on 06.09.18
浅田 次郎
朝日新聞社 (2000/10)
売り上げランキング: 3,106
おすすめ度の平均: 4.66
5 大切なものへの100マイル
5 人間模様
4 マリに泣かせられた。

「大好き」な浅田次郎さんの作品です(かぎ括弧付きなのは、彼の任侠モノは読まないから)。


まずはあらすじです。
主人公城所安男は、バブル崩壊で経営していた不動産会社を倒産させ、家庭も失い、養育費も払えない状況。そんな矢先、兄弟4人を女手ひとつで育ててくれた母親が心臓の病気で入院してしまいます。このまま死を静かに迎えるか、それとも外科手術にかけるか・・・。心臓外科の権威すらサジを投げるような重篤な症状だったのですが、日本で唯一成功させる可能性がある医者がいます。でも今入院している病院からは160km、そうちょうど100マイル離れているのです。安男は母親と自分の命をかけてその病院まで母親を自分の運転で運んでいきます。果たしてその先に待っているのは・・・。


涙腺が弱い人はぜったいに泣きます。ですから電車の中では読まないでください。
あたしが思わずウルウル(T_T)してしまったのは、243ページ目から始まる、安男と亡き父親の声との会話の中で、(おふくろは俺に、金持ちになれって言い続けてきた。もしかしたらそれは、金持ちになっておふくろを忘れろっていうことか)という安男の言葉に対して父の声が言ったこのセリフ。

(そうだよ。それでいいんだ。今のお前は貧乏だから、金で買えないものを知っている。でもそんなことは、おかあさんの本意じゃないさ。貧乏なお前に助けて欲しくはない。金持ちのお前に見捨てて欲しい。おかあさんはたぶん、そう思っている。)

それと、227ページから235ページまで続く、安男の同棲相手のマリの長セリフは、とても泣けます。無償の愛っていうことばはもう親子関係においてですら存在しないって思ってた。もちろん小説の上ですが、こういう言葉が聞けるっていうのはとてもうれしかった。
デブでブスを自認してるマリは、とても不幸な生い立ちなのにそれに恨み言を言うわけでもなく、明るく生きています。そんなマリは不幸な男性を見ると放っておけなくなって、つい家に引き込んでしまうのですが、2年くらい経つと男たちは立ち直ってマリの元を去っていくのです。そんなマリが安男のことを本当に心から愛していたことがわかる場面です。女は見た目じゃないよ、中身だよ、な・か・み!


老人介護とか終末医療とかいうような新しいテーマを織り込みながら、物語の中心を貫くのは浅田さんの作品に共通する「愛」で満ちています。我が子を思う愛、親への愛、離れ離れになった家族への愛、そして
連れ添う人への愛・・・、純粋であればこそ壊れやすくて美しいのでしょう。


ちょっと甘めだけど★★★★★。薄い本なので簡単に読めます。旅のお供にどうぞ。ただし他人の目が届かない場所で。